日本の社会保障
代表取締役 河内信幸
§社会保障とは?§
社会保障とは、私たちが安心して生活していくために必要な「医療」、「年金」、「福祉」、「介護」、「生活保護」などの公的サービスのことを指しています。社会保障費は、これらの公的サービスにかかる費用のうち、自己負担分を除いたものになります。社会保障制度は、私たちの「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティネットです。1961年には、我が国の全ての国民を対象に、医療費や老後の所得を国が保障する「国民皆保険・皆年金」が実現しました。
1960年代の社会保障は失業対策や生活保護などが中心でしたが、次第に医療保険や年金制度などの社会保険や、高齢者の社会保障を中心とする福祉、介護などに重点が移ってきました。社会保障費は、高齢化社会の到来とともに年2~3%増えており、2018年度は約121兆円で、GDP(国内総生産)比で21.5%に上る規模となっています。政府の推計によると、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年度は、社会保障費が2018年度に比べて16%増の140兆円になると見込まれています。日本社会は急速に高齢化が進んでおり、それにともなって社会保障の給付と負担がますます経済の伸びを上回って増大すると見込まれています。(参照サイト 財務省<https://www.mof.go.jp/zaisei/>:厚生労働省<https://www.mhlw.go.jp>:厚生労働省「社会保障教育ポータルサイト」<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kyouiku/index.html>
§社会保障の行方§
我が国の社会保障制度は、高度経済成長期であった1960~70年代にその骨格が完成し、次のような点を前提としておおむね構築されました。
第一は正規雇用・終身雇用・完全雇用であり、皆保険・皆年金を達成するため、サラリーマンは職域保険(健康保険、厚生年金)に、その他の者は地域保険(国民健康保険、国民年金)に加入すること。第二は右肩上がりの経済成長であり、 給付の増大は、給与の上昇による保険料収入の増加や税収増により賄うこと。第三は企業の福利厚生の充実、地域社会のつながり、核家族モデル(特に専業主婦)であり、高齢者に対する給付が相対的に手厚くなっている一方で、現役世代についての対応は補完的になっていること。しかし、現在の社会保障制度を取り巻く環境は、長引く低成長と少子高齢化を受けて大きく変化しています。これは、雇用基盤の変化(就労形態の多様化)、家族形態の変化(単身高齢世帯の増加)、地域基盤の変化(人口減少、都市化と過疎化の同時進行、地域コミュニティの弱体化)などが原因です。(参照サイト<https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/kentohonbu/dai1/siryou2.pdf>)
2007年には総人口に占める65歳以上の人口割合(高齢化率)は20%を超え、我が国は超高齢化社会に突入しました。その一方で、1人の女性が一生の間に産む子どもに相当する合計特殊出生率は1995年以降、1.5を下回る低水準で推移しており、2022年には出生数が初めて80万人を下まわる状況となりました。
総人口も2008年の1億2808万人をピークに減少に転じ、2050年には9515万人になるという推計も出ています。2023年10月1日現在、日本の総人口は1億2435万2000人で、前年に比べ59万5000人、割合にして0.48%の減少となりました。しかも減少幅は次第に拡大しており、2050年には高齢者人口が約1200万人増加するのに対し、生産年齢人口は約3500万人、若年人口は約900万人減少すると見込まれています。このように人口総数とその構成が大きく変化するなかで、社会保障給付を国民全体で公平に負担しつつ、しかも高齢化社会のニーズに適切に対応するための制度改革が求められています。これは、少子・高齢化社会の急速な進行に直面した我が国の喫緊の課題です。(参照サイト<https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/clinic/nhc/maruwakari/202403/583586.html><https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2023np/index.html><https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf>)